法人の役員に資産を無償又は低額で譲渡した場合の消費税の取扱い
税理士 林 俊一のコラム(第98回)
消費税は、原則として、実際に受領した課税資産の譲渡等の対価の額に課税することとされています。
例外として、対価を得ない取引に対して、対価を得て行う資産の譲渡とみなして課税されます。
また、一定の取引でその対価の額が時価に比べて著しく低い場合には、その時価を対価の額とみなして課税されます。
1 役員に資産を贈与した場合
課税資産を役員に贈与した時におけるその資産の価額、すなわち時価に相当する金額に消費税が
課税されます。
ただし、棚卸資産を贈与した場合には、その棚卸資産の仕入価額以上の金額で、かつ、通常他に
販売する価額のおおむね50%に相当する金額以上の金額を対価の額として確定申告したときは
その取扱いが認められます。
2 役員に資産を低額譲渡(著しく低い価額)した場合
実際に役員から受領した金額ではなく、時価に相当する額に消費税が課税されます。
この場合の低額譲渡とは、その資産の時価のおおむね50%に相当する金額に満たない価額により
譲渡した場合をいいます。
なお、譲渡された資産が棚卸資産である場合には、その資産の仕入価額以上の金額で、かつ、
通常他に販売する価額のおおむね50%に相当する金額以上の金額であるときは、低額譲渡した
場合には該当しない、すなわち、時価に相当する金額では課税されません。
(注1) 資産とは、販売用の商品、事業等に用いてる建物、機械、備品などの有形資産などをいいま
す。
(注2) 資産の譲渡とは、売買、代物弁済、交換などにより、資産の所有権を他人に移転することを
いいます。
(注3) 時価とは、売却を前提とした実現可能価額とされています。