必要経費が65万円未満でも65万円を必要経費にできます
税理士 林 俊一のコラム(第46回)
通常、事業所得、雑所得の金額は、収入から必要経費を差し引いて行います。
ここでいう必要経費は、実際に発生したものでなければなりません。しかし、実際にはかかっていない分も経費として認められる特例があります。
「家内労働者等の所得計算の特例」という制度です。
この特例は、実際にかかった経費が65万円未満でも65万円までは経費として認められるというものです。
特例が利用できるのは、「家内労働者等」に限られます。また「家内労働者等」とは法令によると次のようになります。
「家内労働法に規定する家内労働者や外交員、集金人、電力量計の検針人、その他特定の者に対して継続的に人的役務の提供を行うことを業務とする者」とされています。
ポイントは①特定の者に ②継続的に ③人的役務の提供を行うことを業務とする者であれば、この規定が適用されます。
例えばシルバー人材センターからの収入(分配金)を受ける者については、シルバー人材センターに対して継続的に人的役務の提供を行うことを業務とする者であり家内労働者等に含まれます。
しかし、自宅でピアノを教えているピアノ講師については、不特定多数の者に対して人的役務の提供を行うことを業務とする者でありますので、家内労働者等に含まれません。
この制度の背景にあるのは、パート労働者との不均衡を解消することにあります。
主婦がパートとして働いていた場合には給与所得になり、最低65万円の給与所得控除が受けられ年収103万円以下であれば所得税がかかりません。
しかし、内職で103万円の収入がある場合、経費が65万円未満であれば所得税がかかることになります。
この両者は実態的には違いはなく、このため両者の不均衡を是正するため特例制度ができました。