遺産分割協議が成立後に遺言書を発見
税理士 高橋 徹 のコラム(第37回)
先日、父の遺産について相続税の申告期限までに遺産分割協議を行い、相続税の申告と納税を済ませたのですが、最近になって父の遺言書が出てきたため、家庭裁判所の検認を受け、その内容を確認したところ、分割協議とは別の内容が記載されていました。
どういう手続きを取ればいいでしょうかとのご相談を受けました。
遺言書は亡くなった人の最終の意思と言われる重要なものですから、非常に大きな力を持っており、遺言書にしたためられた内容は、最大限に尊重されるべきものとされ、民法に定められている法定相続分よりも優先されるものです。
したがって、遺言書の内容を知らずに遺産分割協議をしたとしても、遺言書に記載されている内容が優先し、協議の内容と抵触する部分は無効となります。
しかし、遺言書の内容を理解承諾したうえで、相続人全員がすでにした遺産分割協議の内容をそのまま維持することは有効と解されており、遺産分割をやり直す必要はありません。
これは、故人の意思である遺言の内容は最大限尊重されるべきであるとしても、遺言作成時と相続開始後では状況が異なる場合もあり、関係者の全員が合意している場合にまで遺言内容の拘束力を認めると、柔軟な遺産相続が困難となるためです。
〇相談に対する回答
その遺言を執行することにより、当初申告において相続財産に含めていた財産を取得することができなくなったため、当初申告における相続税の課税価格が過大となった相続人は、相続税の更正の請求をすることにより、納め過ぎになっている相続税の還付を受けることができます。
それに対し、その遺言により当初申告より取得する財産が増えた者は、そのことを知った日の翌日から10カ月以内に相続税の修正申告書を提出し納税することになります。
また、遺産分割をやり直さなかった場合については、上記アンダーライン部分に記載のとおりです。