高橋 徹 - ライブラリー

行方不明の相続人がいるときの遺産分割協議は

税理士 高橋 徹 のコラム(第38回)

1213takahashi.jpg

 遺産分割協議は相続人全員で行わなければならず、一部の相続人のみでなされた遺産分割協議は無効です。
 そのため、相続人の中に行方不明者がいる場合、そのままの状態で遺産を分割することはできません。
 遺産分割協議ができないと、不動産の相続登記が行えず売却できない、銀行口座の解約ができないといった問題が出てきます。
 そんなときには「失踪宣告」や「不在者財産管理人選任審判申し立て」などの裁判所での手続きを行うことで、遺産分割協議を進めることができるようになります

1 失踪宣告の申し立て
 失踪宣告は、行方不明から7年間(災害や遭難などの危機で生死不明の場合は危難が去ってから1年間)経過した場合に、家庭裁判所に申し立てを行うことにより、行方不明者が法律上で「死亡したもの」とみなされる制度です。
 失踪宣告がなされると行方不明の相続人は死亡したものとして、遺産分割協議は行方不明者以外の相続人と、行方不明者の相続人を加えた全員で行うこととなります。

2 行方不明者(不在者)の財産管理人の選任
 行方不明になってから7年以上経過していない、生きている可能性が高いが所在が分からないという場合には、「不在者財産管理人」の選任を家庭裁判所に申し立てて、選任された不在者の財産管理人に遺産分割協議に参加してもらうことができます。

 相続税の申告が必要となるような遺産がある場合、失踪宣告の手続きには1年~1年半ほどの時間がかかることがあるため、相続税の申告期限(10ヶ月以内)を考慮して「不在者財産管理人」の制度を利用する例が多いようです。


岩内事務所 所長 税理士 高橋 徹