所得税法における業務って?
税理士 柏樹 正一のコラム(第11回)
税法は取っ付きにくい、一読難解、二読誤解、三読不可解などと良く言われます。
今回は、そのような例を紹介します。
所得税法では、「業務」という用語がしばしば用いられています。
この「業務」ですが、①「事業」と対比しての業務的規模(事業に至らない程度の規模)を示す場合と、②業務的規模と事業的規模を併せて示す場合があります。
ただ、条文上は「業務」としか表現されていませんので、どちらを示すのか分かりにくいことがあります。
例えば、「不動産所得、事業所得又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入すべき金額は、…これらの所得を生ずべき業務について生じた費用の額とする。」という規定があります。
この場合の「業務」は、
①事業的規模の不動産所得と事業所得
②業務的規模の不動産所得と雑所得
が、同一の条文の中で規定されていますので、事業所得については事業的規模を、また、雑所得については業務的規模を意味するのに対して、不動産所得については、事業的規模と業務的規模の両方を意味するものとなっています。
従いまして、事業所得に限れば、「事業所得を生ずべき事業について生じた費用」と解釈することになります。
何だか禅問答のような内容になってしまいましたが、次回は、不動産所得における事業的規模と業務的規模の別による、所得金額の取扱いの違いを紹介します。