請負工事に係る収益の計上方法
税理士 林 俊一のコラム(第59回)
物の引渡を要する請負契約については、その目的物全部を引き渡した日に収益を計上することが原則です。これを工事完成基準といいます。
一方、この例外として長期大規模工事に該当する場合には、工事の進行に応じ収益、費用を計上することが税務上必要となります。この計上方法を工事進行基準といいます。
ここでいう長期大規模工事とは、次の要件を満たす工事内容となります。
①着手の日から目的物の引渡の期日までの
期間が1年以上であること
②請負の対価の額が10億円以上であること
③請負の対価の額の二分の一以上がその工
事の目的物の引渡の期日から1年を経過
する日後に支払われることが定められて
いないものであること
また、工事進行基準とは、次のように計算する方法です。
【工事中の事業年度】
当期収益の額=(工事の請負の対価の額×工事進行割合)-前事業年度までに計上した収益の額の合計額
当期費用の額=(工事原価の額×工事進行割合)-前事業年度までに計上した工事原価の額
※工事進行割合=既に要した原材料費、労務費、経費の合計額÷工事原価の額
【引渡事業年度】
当期収益の額=工事の請負の対価の額―前事業年度までに計上した収益の額の合計額
当期費用の額=工事原価の額―前事業年度までに計上した工事原価の額
このように、工事進行基準というのは、収益が実現したときに営業収益を計上するという原則に対する例外で、未実現の利益の先取り計上をするというものです。
長期大規模工事については、この工事進行基準による計上が強制適用となりますので注意してください。