税務上、貸倒損失が計上できる場合
税理士 林 俊一のコラム(第56回)
売掛金、貸付金など金銭債権について実務上種々の事情で回収ができなくなる場合があります。
会計上は貸倒損失ということで費用計上します。
しかしながら、税務上は費用(損金)として計上するための要件が定められています。
税法上は明確な規定はありませんが、法人税基本通達9-6-1~9-6-3で取扱規定が定められています。
※法人税基本通達とは、税法の適用を統一的に行っていくために、各税法の法令解釈通達が国税職員向けに定められているものです。
それぞれの通達の留意点、ポイントは次のとおりです。
9-6-1(金銭債権の全部又は一部の切捨てをした場合の貸倒れ)
○ 法律上の貸倒というもので、各法令の規定により金銭債権が消滅した場合、消滅した時点において損金の額に算入されるものです。
9-6-2(回収不能の金銭債権の貸倒れ)
○ 事実上の貸倒れというもので、法律上の債権が存在するにもかかわらず、事実上回収不能である場合をいいます。
○ ここでのポイントは、①金銭債権の全部が回収不能である場合に限られること ②貸倒れが明らかになった事業年度において、損金経理(確定した決算で費用又は損失として経理すること)が必要です。
9-6-3(一定期間取引停止後弁済がない場合等の貸倒れ)
○ 形式上の貸倒れというもので、注意点としては、売掛債権等のみであり、貸付金等は対象とならないということです。
○ 「債務者との取引を停止した・・・・」とある取引の停止とは、継続的な取引を行っていた債務者につき、その資産状況、支払能力等が悪化したため、その後の取引を停止するに至った場合をいいます。
したがって、不動産取引のように継続性のない売掛債権は適用がありません。
○ 9-6-2と同様に損金経理を要します。