相続した非上場株式を発行会社に譲渡した場合の特例(その2)
税理士 高橋 徹 のコラム(第25回)
前回、相続により取得した非上場株式を発行会社に譲渡した場合の課税の特例について説明しました。
この特例は、相続税の場合、換金が容易でない非上場株式についても財産評価通達に基づいて評価した上で相続税が課税されることから、内部留保が大きな法人になると相当多額の納税が必要となります。
その納税資金を確保するために非上場株式を譲渡することも考えられるため、相続税を課税された人が相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに、その非上場株式を発行会社に譲渡した場合には、所得税の負担を軽減するみなし配当の特例制度が認められています。
みなし配当の特例は相続が起こった場合にしか適用できない特例であり、同族会社の内部留保を少ない税負担で引出す機会です。
この特例を活用する際の、税金以外の注意点を記載します。
(1)経営権の確保
後継者である相続人が非上場株式を発行会社に譲渡することにより、議決権割合の分母も減少しますが、当然に後継者の持株数も減少することとなります。
譲渡後の議決権割合をよく検討してから実行する必要があります。
(2)会社の資金流出
自社株を発行会社が買い取ることにより多額の資金が会社から流出することになりますので、資金流出によって事業継続に問題がないかの検討が必要です。
(3)会社法上の財源規制
会社法上、債権者保護の観点から配当や自社株の買い取りの際に財源規制が設けられていますので、これに抵触しないか事前に確認が必要です。