相続した非上場株式を発行会社に譲渡した場合の特例
税理士 高橋 徹 のコラム(第24回)
個人が株式を発行会社に譲渡した場合、譲渡価額のうち、譲渡株式数に対応する資本金等の額に対しては譲渡所得が、譲渡株式数に対応する資本金等の額を超える額は利益積立金額の払い戻しとみなされ配当所得が課税されます。
譲渡所得は分離課税となりますので、譲渡益に対し20.315%の税率(所得税+復興特別所得税+住民税)で課税されるのに対し、配当所得は総合課税となりますので、最高で55.945%の税率(所得税+復興特別所得税+住民税)で課税されることとなっており、税負担が非常に高額になります。
そこで、相続により取得した非上場株式を発行会社に譲渡した場合の課税の特例が定められています。
(1)譲渡対価の全額を譲渡所得の収入金額とする特例
相続又は遺贈等により財産を取得して相続税を課税された人が、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに、相続税の課税対象となった非上場株式をその発行会社に譲渡した場合には、その人が株式の譲渡の対価として発行会社から交付を受けた金銭の額が、その発行会社の資本金等の額のうちその譲渡株式に対応する部分の金額を超えるときであっても、その超える部分の金額は配当所得とみなされず、発行会社から交付を受ける金銭の全額が株式の譲渡所得に係る収入金額とされます。
(2)相続税額を取得費に加算する特例
相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに、相続税の課税対象となった非上場株式を譲渡した場合には譲渡所得を計算するに当たり、その非上場株式を相続又は遺贈により取得したときに課された相続税額のうち、その株式の相続税評価額に対応する部分の金額を取得費に加算して収入金額から控除することができます。