遺産分割前の預貯金の仮払い制度
税理士 高橋 徹 のコラム(第15回)
平成30年の民法改正に伴い、「預貯金の仮払い制度」が新設されることになりました。
現行制度では、遺産分割協議が終了するまでは、預貯金を含む相続財産は相続人全員の共有財産となりますので、遺産分割の前に預貯金の払戻しや名義変更ができませんでした。
そのため、生活費や葬儀費用・入院費用等の支払、被相続人の借入金の返済等のため、相続人が一時的に立て替える、または新たに借入れる等の問題が生じました。
このような事態を解消するため、民法を改正して遺産分割協議が終わる前でも、金融機関から預貯金を引き出せる2つの「仮払い制度」が新設されました。
1 家庭裁判所で手続きする方法
家庭裁判所に遺産分割の審判または調停を申し立てたうえで、預貯金の仮払いを申し立てると、
家庭裁判所の判断により共同相続人の利益を害さない範囲内で仮払いが認められる方法です。
2 直接、金融機関の窓口で手続きする方法
各相続人が単独で、金融機関へ一定の金額の払戻し請求ができる方法です。
(一定の金額)
相続開始時の預貯金の額×1/3×仮払いを求める相続人の法定相続分
1の家庭裁判所で手続きする方法は、煩雑な手続きとコストや時間がかかるとの指摘がありますし、2の直接、金融機関の窓口で手続きする方法は簡便かつ短期間で払戻しを受けることができますが、金融機関ごとの上限額が150万円とされているため、多額の資金需要には適さないとの指摘があります。
必要とする費用の額に応じて二つの方法を選択する必要があります。
新制度は、平成31年(2019年)7月1日以後の払戻しからスタートします。