退職所得課税の見直し
税理士 柏樹 正一のコラム(第49回)
退職金は、長期間にわたる勤務の対価が一時期にまとめて後払いされるものであることや、退職後の生計を立てるための一時金であることなどを考慮して、退職所得を計算する場合には、退職金から勤続年数に応じた「退職所得控除額」を控除した残額の「2分の1に課税」するという、税負担の軽減措置が設けられています。
この2分の1課税について、短期間のみ在職することが当初から予定されている法人の役員等が、給与を下げ、その分を退職金に上乗せして受け取ることにより税負担を回避するという事例が見受けられたため、それを防止するため、平成25年以降、勤続年数が5年以下の役員等はこの措置が廃止されました。
そして、同様の事例が従業員にも見受けられるため、令和3年度の税制改正によって、令和4年以降、勤続年数が5年以下の従業員についても、一定金額以上の部分について、この措置が廃止されることになりました。
一定金額以上の部分については、近年の雇用の流動化に配慮しつつ、影響を受ける対象者を緩和する観点から、退職所得控除額を控除した残額の300万円を超える部分とされました。
具体的には、例えば、勤続年数が5年の場合、退職所得控除額は200万円(5年×40万円)ですので、退職金が500万円を超える方が影響を受けることになります。