会社に対する無利息貸付
税理士 柏樹 正一のコラム(第18回)
社長さんが個人で、自分が経営する会社に対し無利息で資金を融資する場合があります。
会社が無利息で資金を融資した場合、法人は純粋に経済活動を目的とする企業体であるため、法人税法では、無償による役務の提供として利息相当額が課税の対象になります。
これに対して、個人が無利息で資金を融資した場合、個人は経済人としての一面と純粋な私人としての一面を併せ持っていることに加え、所得税法は収入金額を「収入すべき金額」と規定し、一般的に、収入金額は外部からの経済的価値の流入と考えられていますので、課税の対象とされていません。
また、会社は、社長さんから利息相当額の利益を受けたといえますが、会社としては、本来ならば利息を支払わなければならないものですので、無償による役務の譲受けには同額の費用が擬制され、課税の対象とされません。
なお、特殊なケースとして、パチンコ機器メーカーの代表者が自ら経営権を持っている有限会社に対して3千億円を超える多額の金銭を無利息、無担保、無期限で融資したことをめぐり、代表者に利息相当額の雑所得が課税されたことの是非が争われた裁判で、「収入金額」の規定ではなく、独立対等で相互に特殊関係のない当事者間では通常行われることのない不合理、不自然な経済活動で、代表者の所得税の負担を不当に減少させる結果となると認められるとして、「同族会社の行為計算の否認」の規定が適用され利息相当額の認定課税が認められたことがあります。
「同族会社の行為計算の否認」という言葉は聞き慣れない方も多いと思いますので、次回に紹介します。
札幌事務所 副所長 税理士 柏樹 正一