生計を一にする親族に支払った対価について
税理士 柏樹 正一のコラム(第6回)
個人事業では、事業主が親族の所有する建物を使用したり、親族から資金の借入れをしたり、親族が従業員として働いたりする場合があります。
これらの場合、他人や生計を別にする親族に支払った賃借料、借入金利息、給与などは必要経費になりますが、所得税法では生計を一にする親族に対して支払った対価は必要経費に算入することはできないとされています。
ただ、この取扱いは、必要経費とされない分だけ事業主の所得が増加して不公平となるので、生計を一にする親族が事業のために支出した費用がある場合には、その費用は事業主の必要経費に算入され、また、親族が事業主から支払を受けた場合には、その収入はないものとされています。
従いまして、例えば、事業主が生計を一にする親族の所有する建物を事業に使用している場合において、その親族が支払った固定資産税、火災保険料、借入金利息、修繕費、維持管理費等は事業主の必要経費となり、また、その親族が事業主から家賃の支払いを受けたとしても、その収入はないものとみなされます。
なお、給与については、一定の要件を満たした場合には専従者給与等として、必要経費に算入されます。
この点については、次回、紹介します。