100年企業をめざす「事業の承継」(第81回)
82.分散株式と名義株式を承継前に処理した方がいいですか?
POINT
1 ► 名義株式が事業承継に及ぼす影響 |
2 ► 名義株式の対応 |
3 ► 分散株式を取り戻す |
◎ ———— 名義株式が事業承継に及ぼす影響
平成2年の商法改正前では、株式会社設立に際して最低7人の発起人が必要でした。実際には創業経営者が一人で出資して設立し、親戚や友人の名義を借りて株主となってもらうことが多く見られました。
また、相続税などの税務対策として他人名義を借用するなどにより、実質出資していない名義だけの株式が生まれてしまいました。このような名義を借りる必要がなくなった後にも、名義を整理せずに長年放置してしまったばかりに、名義人なのか出資者なのかもめる原因となります。事業承継にも、影響を及ぼす可能性があります。
例えば、経営者側と名義人との間で、株式の帰属について争うだけなら直接的な影響は少ないかも知れません。しかし、現在の経営陣が株主総会で選任されず、株主として議決権の行使ができなかったことを理由に「取締役職務執行停止の仮処分」「議決権行使禁止の仮処分」「株主総会開催禁止の仮処分」など、名義人が法的手段を取る可能性があります。
さらに経営者に相続が発生した場合に、名義株が経営者の相続財産であるとの認定がされ、相続税の課税が生じる可能性もあります。また、名義人に相続が発生した場合に、名義株であることを立証することができずに、名義人の相続人から高額な買い取り請求を要求されることがあります。
◎ ———— 名義株式の対応
名義株式の対応は、その時の事情をよく知る創業経営者が、解決することがいいでしょう。
特に名義を借りた経営者や、貸した名義人の双方が亡くなってしまった場合は、証明することは難しくなります。名義株式であることを明確にさせる場合は「名義貸与承諾証明書」を、名義変更する場合は「名義書換承諾書」に署名捺印をしてもらい、さらに印鑑証明書もつけてもらいます。
場合により「名義書替承諾書」は、贈与税の対象となる可能性があります。専門家に相談しながら進めた方がいいでしょう。
◎ ———— 分散株式を取り戻す
企業の歴史が長くなれば「名義株式」「相続対策として、積極的に親族に株式を贈与した」「従業員のモチベーションを高めるために自社株を持たせた」などの理由で、株式を分散してしまった企業も存在します。これらの分散株式を買い戻す方法として、次が挙げられます。
① 相続人と合意の上で株式を買い取る
② 会社が売渡希望の株主から、自己株式を取得する方法で買い取る
③ 定款変更し、現株主の相続の時に、その相続人から強制的に買い取る(売渡請求)
事業承継に備えて、株式を取り戻す対策と、分散させない対策を検討してください。
次回タイトル
【相続をきっかけに乗っ取られることが、本当にありますか?】
H28.7.1更新予定です。 どうぞお楽しみに!