100年企業をめざす「事業の承継」(第1回)
新しい連載コラムがスタートします。
このコラムを目にして下さったあなたの胸には、今どんな想いがあるのでしょうか? 今まさに事業のバトンタッチを構想中!という方もいらっしゃるかもしれませんね。あなたとの出逢いに心から感謝いたします。
汗と涙で育て上げた、かけがえのない事業。
たくさんの歴史や思い出と共に、事業は後世へと伝えたいものです。
私自身、創業50周年を迎えた会計事務所の事業承継対策を、今実行過程にあります。その最中の執筆とあって、今回のテーマ「事業承継」には特別の思い入れがあります。
はるかなる昔、小さな事務所に看板をかかげ、家内を乗せた自転車で砂利道を走った開業の頃。当時の光景は色褪せることなく、今も鮮やかによみがえってきます。
あれから50年、6人の税理士を含めスタッフは約50人。それなりの規模になりました。しかし、業界の今は、“雨のち嵐”を迎えようという厳しい環境です。
企業の寿命は30年という仮説がありますが、永続する長寿企業を実現するためには「計画的な事業承継」は欠かせないものです。そして、承継されるものは事業だけではありません。
私は、人の心の弱さをよく知っています。「兄弟は他人の始まり」という言葉があるように、相続や事業承継がもとで起こるトラブルを私は数多く見てきました。正しい事業承継は、従業員を含め家族の間で起きがちな骨肉の争いを避ける狙いもあるのです。幸せな事業承継には、未来を見据えた計画的な対策と時間が必要です。
しかし、関連する法律も複雑に絡み合い、難しいものです。
残念ながら“法律は弱者の味方ではなく、法律を正しく知る者の味方”なのです。
この連載コラムでは事業承継対策に関する複雑な事例や具体的な手法を、わかりやすい表現で紹介していきます。
あなたの幸せな事業承継のお役に立てますよう、心からお祈り申し上げます。
1.事業承継を、なぜ今考えなければならないのですか?
POINT
1 ►人生には限りがある |
2 ►企業の長期存続と発展に、事業承継は欠かせない |
3 ►企業の行く末は、経営者が5つの選択肢から決断する |
◎ 人生には限りがある
近年は、医療技術も進み長寿大国の日本となっておりますが、残念ながら人間は不老不死ではありません。人生には限りがあります。その一方で企業は、環境の変化を敏感に感じ取り、強い結束力と適応力、健康な体質を作り上げることで、長寿企業として社会の中で生き続けることができます。
◎ 企業の長期存続と発展に、事業承継は欠かせない
中小企業の場合には、事業を構成する財産と経営が一体化して、経営者に全ての権限が集中しています。そして、経営者の持つカリスマ性や営業力、経営手腕が金融機関や取引先などから社会的信頼を得て、企業発展の原動力になっています。経営者は、企業の存続にとって欠かせない存在です。
だからこそ「社長にもし万が一のことがあったら」「そのあとはどうしたらいいんだ」と周囲の人が心配と不安を募らせる前に、自身で次世代のことを考えなければなりません。
経営者として事業承継は、最大の仕事です。事業承継が失敗に終われば、企業は縮小し淘汰されてしまう可能性があります。しかし、事業承継を計画的にすすめ、後継者を育てバトンタッチすれば、長寿企業として存続することができます。
◎ 企業の行く末は、経営者が5つの選択肢から決断する
企業の行く末は、経営者が進路を決めなければなりません。選択肢としては、次の5つがあげられます。
① 親族への承継
経営者の多くは、親族への承継を望んでいます。事業と相続財産の承継を同時に行うことが
できますので、特に直系子孫への承継は自然な流れです。しかし、子が経営者として適任で
あるか、また本人の希望などを充分に考慮することが重要です。
② 従業員などへの承継
社内の優秀な社員を起用する方法と、外部から有能な人物をスカウトする方法が代表的です。
周囲の協力を得ながら最適な人物を選定することが重要です。
金融機関からの融資やファンドからの出資および融資を受け、
親族以外の役員や従業員へ、自社株を売却するMBO、EBO
という承継方法もあります。
③ M&A(mergers and acquisitions)
企業の合併や買収により経営権を移転することです。適任となる後継者がいない場合でも、
第三者へ株式の譲渡・事業の譲渡・会社の分割や合併などを行うことで、企業の存続が
可能となります。
④ 廃業・解散
親族および従業員などから後継者が見つからず、M&Aの可能性も見込めない場合に、
廃業・解散という選択を決断しなければならないことがあるかもしれません。
廃業・解散は、従業員の雇用や取引先、金融機関などに大きな影響を与えることになります。
⑤ 株式公開
株式公開することで、多様な資金調達の間口が拡大します。また、時価発行増資などのプレ
ミアムで自己資本が充実し財務体質の強化が図られます。自社株式が換金性を持つことが
できますので、事業承継対策として有効な手段となります。
【連帯保証債務があって 事業承継に踏み込めません。どうしたらいいでしょうか?】
H25.2.1 更新予定です。どうぞお楽しみに!!