名義預金って何
税理士 高橋 徹 のコラム(第40回)
親や祖父母が子供や孫のために、子供や孫の名義で通帳を作成し預金をしているというケースは多いと思われます。その後、親や祖父母が亡くなり相続税の申告が必要な場合に子供や孫の名義の預金は課税対象外であると考える方も多いと思いますが、このような預金のことを「名義預金」といって相続財産に加算される場合があります。
相続税の税務調査は被相続人(亡くなった方)の財産、その総てが漏れなく申告されているか否かを確認するものです。名義が相続時に誰のものになっているにせよ、その財源が被相続人のものであると判断された場合は被相続人の財産であるとみなされ、相続財産に加算されることになります。
預金をした時点で贈与がなされたと主張するケースがありますが、贈与は契約なので「あげます」「もらいます」ということが契約の当事者間で確認されていないと無効です。したがって、贈与があった場合には、その財産をもらった人がその事実を知っていて、その財産の管理も本人が行うことが必要です。(未成年者の場合は、親権者が管理をしていても問題ありません。)
被相続人以外の方の名義である預金が相続開始時において被相続人に帰属するものか否かについては、過去に納税者と税務当局との間で多くの争いがあり、訴訟が提起され判決が下っています。裁判所の判断には概ね次のような基準が示されており、その4つの要素を総合勘案して判断するという判例がほぼ固まっています。
名義預金についての基本的な判断要素 (裁判所の判断する基準)
① 資金源泉 ⇒ その預金の預入資金を拠出した者は誰か
・預金預入時に名義人に必要な資金があったか
・当時の可処分所得はどうだったか
② 贈与の有無 ⇒ 贈与契約・実行の有無はどうか
・贈与契約書の取り交わしはあるか
・贈与時において贈与者に意思能力があったと認められるか
③ 管理・運用 ⇒ 財産の管理(支配)・取引(運用)を実質的に行っていた者は誰か
・被相続人の口座との連動性はないか
・使用印鑑・登録住所・通知文書の郵送先・取引文書(伝票等)の筆跡はどうか
④ 果実の享受 ⇒ 利子・配当・解約金の実質的な受領者は誰か
・名義人の管理下にある預金口座等で受領しているか