湯浅 修平 - ライブラリー

役員死亡退職金が、相続財産にならない場合も?

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 役員の退職金は、株主総会(取締役会)の退職金支給決議によって、具体的な権利が生じます。

 生前に会社を退職していれば、本人に退職金請求権が発生しますので、それが相続人に相続されるという争いはないでしょうが、死亡をきっかけに退職金が支給される「役員死亡退職金」には、相続に絡んだ重要な問題が発生することがあります。

 退職金規程に「退職金を請求できる人」が定められている場合、よくある記載例では、「退職金の支給を受ける者は、本人またはその遺族で、会社が正当と認めた者とする。遺族は、労働基準法施行規則第42条ないし45条の遺族補償の順序に従う」などと書かれています。
遺族は、民法上の相続人とは違うようです。

その施行規則を見てみますと、
第四十二条とは、

 遺族補償を受けるべき者は、労働者の配偶者(婚姻の届出をしなくとも事実上婚姻と同様の関係にある者を含む。以下同じ)とする。

2. 配偶者がない場合には、遺族補償を受けるべき者は、労働者の子、父母、孫及び祖父母で、労働者の死亡当時その収入によって生計を維持していた者又は労働者の死亡当時これと生計を一にしていた者とし、その順位は、前段に掲げる順序による。この場合において、父母については、養父母を先にし実父母を後にする。


第四十五条とは、

 遺族補償を受けるべきであった者が死亡した場合には、その者にかかる遺族補償を受ける権利は、消滅する。

2.前項の場合には、使用者は、前三条の規定による順位の者よりその死亡者を除いて、遺族補償を行わなければならない。

 
 上記の受給者の定めと相続人とのズレがあるために、役員死亡退職金を、相続財産として、分割資金や納税資金と考えている場合、大きな誤算になる可能性を秘めています。

 退職金規程で相続人と異なる受給権者の定めがある場合には、その受給権者の固有の権利として扱い、相続財産には含めないと考えられているようです。

 よって、ぜひこの機会に、会社の役員退職金規程で、受取人の記載があるかどうか? 
どのような順位の受取人になっているか?確認をおすすめします。
場合によっては、専門家に相談されるといいでしょう。

                           東京事務所 所長 税理士 湯浅 修平