所得税と法人税の関係
税理士 柏樹 正一のコラム(第27回)
所得税は、個人が一年間に得た所得に対して課税されるもので、今から131年前の明治20年に財政需要の増大に伴う財源確保や地租、酒税に偏った税収構造を是正するために導入されました。
一方、法人の所得に対して課税されるようになったのは、明治32年で日清戦争終結後の歳費調達のためでしたが、当初は所得税の一種として取り扱われ、法人税として独立したのはその41年後の 昭和15年です。
法人の性格に関し、従来から、法人は単に株主の集合体であるという法人擬制説と、法人は個人と並んで独立した納税者であるという法人実在説の二つの考え方があります。
現行税制における法人税は、基本的に法人擬制説が採られているといわれ、法人は個人が事業を営む手段として設立されたもので、法人が利益を得た段階で納税してもらうが、株主は最終的に個人に行き尽き、所得の最終的な帰属者は個人で、法人税は所得税の前払いであると整理されています。
この考え方に沿って、法人税は比例税率が、所得税は原則累進税率が採用され、また、法人の所得に対して法人税が課税された後の利益から株主への配当がなされるのに、配当を受け取った側に課税すると二重課税の問題が生ずるので、その調整措置として、法人株主には受取配当等の益金不算入の制度が、個人株主には配当控除の制度が設けられています。