不動産所得の損益通算の特例...土地等の負債利子に注意を!
税理士 柏樹 正一のコラム(第22回)
アパート経営者が、金融機関から融資を受け土地等と建物を取得し、借入金の返済時に元金とともに利息を支払うことがあります。
この場合、不動産所得の金額の計算に当たり、不動産所得が黒字であれば、支払利息は全額を必要経費に算入できますが、赤字のときは、土地等を取得するために要した負債の利子の額(土地等の負債利子)は他の所得から相殺(損益通算)できないという特例がありますので、注意が必要です。
具体的には、①土地等の負債利子が不動産所得の赤字の金額よりも多い場合は、所得はゼロとなり、②土地等の負債利子が不動産所得の赤字の金額よりも少ない場合は、所得は土地等の負債利子を控除した赤字の金額となります。
例えば、土地等の負債利子が100万円で、①不動産所得の赤字が80万円の場合は、この特例により不動産所得は0円となり、②不動産所得の赤字が150万円の場合は、この特例により不動産所得は▲50万円となります。
土地等の負債利子は、土地等と建物の取得に要した負債の利子の額に、土地等と建物の取得に要した負債の額に占める土地等の取得に要した負債の額の割合を乗じて計算しますが、一つの契約で同一の者から譲り受けた場合で土地等と建物の負債の額を区分することが難しい場合には、負債の総額から建物の取得価額を控除した金額を土地等の取得に要した負債の額として計算することができます。
なお、この特例は不動産所得の貸付規模に関係がありませんので、不動産の貸付けを事業的規模で行っている場合であっても損益通算の対象とはなりません。