100年企業をめざす「事業の承継」(第74回)
75.生命保険を賢く活用する方法を教えて下さい
POINT
1 ► 生命保険の活用の目的 |
2 ► 生命保険金の種類と課税の関係 |
◎ ———— 生命保険の活用の目的
生命保険を、事業承継や相続対策で活用する目的として、主に次が挙げられるでしょう。
【個人】 ① 相続税の納税資金 ② 代償分割資金
【法人】 ③ 退職金の原資 ④ 自社株買取り資金
生命保険は、契約に基づき現金を得ることができます。また、商品も多種多様で、契約内容を選ぶことができます。
① 相続税の納税資金
活用方法としては「死亡保険金」「保険料の贈与」「生命保険契約の権利の相続」「年金受給権の相続」などがあります。死亡保険金はみなし財産となりますが、下図の非課税枠があります。
保険料を負担したものが保険金などの受取人の場合は、受け取った保険金は一時所得となります。
計算は、次になります。
一時所得 =(死亡保険金額 - 支払保険料 - 50万円) × 1/2
経営者が保険契約者で、後継者(法定相続人)が受取人の場合は、経営者が亡くなった時に相続財産となってしまいます。しかし、生命保険料を後継者などの法定相続人に贈与することで、一時所得となるため効果的と言えます。
生命保険契約の権利を相続する場合は、契約者が亡くなっても死亡保険金を受け取ることはできません。受け取るのは「生命保険契約の権利」となります。このメリットは、相続で権利を受け取った時点での、解約返戻金で評価されることです。
解約返戻金と保険金との金額の差が、メリットとなります。保険料を一時払いにした場合は、返戻額が一番多額になる時に解約することもできます。
年金受給権の相続は、現預金や株式などを相続財産とするのではなく「年金」として財産を残すことになり、相続税が低く評価されます。相続税評価額は、それぞれ次になります。
確定年金の相続税評価額 = 基本年金額 × 残存期間 × 評価の割合
終身年金の相続税評価額 = 基本年金額 × 評価の倍数
② 代償分割資金
生命保険は受取人を指定できる、いわばお金に名前をつけることができます。事業承継では、後継者に相続財産が集中してしまいますので、他の相続人に対して、後継者が代償金として支払う資金として活用することができます。
③ 退職金の原資
確実に支給できる役員退職金として、生命保険を活用することで、万一の場合の保障と退職金の財源を同時に準備することができます。また、保険料は損金算入できますので、保険料が経費となり法人税負担が軽減されます。
支払った保険料は、簿外にストックされ、役員退職金の支払原資として活用できます。
④ 自社株買取り資金
事業承継を円滑に行うために、後継者に自社株式を集中させる必要があります。しかし、後継者には分散した株式を買い取る資金が不足している可能性が高く、その対策として一部を企業が「金庫株」として買い取る方法があります。また、後継者が相続により取得した自社株式を買い取ることで、後継者が相続税の納税資金とすることができます。遺族から買い取れば、遺族の生活資金となります。
◎ ———— 生命保険金の種類と課税の関係
生命保険はその種類や受取人などにより、課税関係が変わります。個人に係る生命保険の課税は、次が関係します。
【個人に係る生命保険の課税】
所得税 |
生命保険控除・生命保険料や 受取り保険金などに対する課税 |
贈与税 |
解約返戻金や満期保険金、死亡保険金や死亡給付金、 基金給付契約に関する権利に対する課税 |
相続税 |
死亡保険金や死亡給付金、生命保険契約に関する権利 定期金給付契約に関する権利に対する課税 |
保険金の種類により、課税関係も変わります。法人に係る生命保険の課税は、次の図を参照してください。
次回タイトル
【信託を活用した事業承継とは、どんな方法ですか】
H28.3.15 更新予定です。 どうぞお楽しみに!