なかの語録

100年企業をめざす「事業の承継」 (第26回)

28.わが社でもM&Aできますか?

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 1 ► 買い手のチェックポイント
 2 ► 買収したいと思う企業の条件を知る
 3 ► 売れる企業にする


     買い手のチェックポイント
 
当たり前のことですが、売れる会社とは、買い手が欲しいと思える企業です。
買い手が、買収する目的に合っているかは必須ですが、その他の買い手のチェックポイントは、
次が挙げられるでしょう。

 ① 客観的な買収金額
  
売却する企業経営者は、育てた企業は思い入れがありますので「少しでも高く売りたい」と考え
 ます。一方で、買収する企業はビジネスとして、企業価値を評価し「少しでも安く買いたい」と考
 えているのが一般的です。
  したがって企業価値を、冷静に客観的に自社を評価することが必要です。

 ② 財務内容のチェック
  
貸借対照表と損益計算書の内容から、買収金額に影響する主なポイントは、次になります。

   A. 資金繰りの状況
   B. 借入および担保状況teoria-l009.gif
   
C. 手形や売掛金、貸付金等の債権状況
   
D. 隠れ債務(保証など)の有無
   
E. 在庫状況
   F.
事業用資産や不動産、有価証券の有無と時価
   G.
不明瞭なコストの有無と額
   H.
経営者や一族への報酬
    I. 役員および従業員への報酬

 

  株主の構成
  
平成2年の商法改正以前は、株式会社設立に当たり、最低7人の発起人が必要でした。
 そのため、平成2年以前に設立している企業では、親族や知人から名義を借りた「名義株主」が
 存在している可能性があります。「名義株主」から株式を買い取る際に、買取価格の引き上げや、
 簡単に応じないことが考えられます。売り手経営者の所有割合や、どれだけの支配権を握って
 いるか検討材料となります。

 ④ 経営者のひととなり
  
中小企業は、経営者が持つ影響力が強いため、M&A実行後に、売り手経営者が一定の期間
teoria-b009.gif 役員などとして残る場合があります。その場合は、買い手にとってM&A実行後
 に、売り手経営者はビジネスパートナーという立場になります。健康で元気なうち
 にM&Aを実行することが望ましいでしょう。
 また、買い手はビジネスパートナーとして信頼できる人物か、売り手経営者の
 人となりを見ています。

     買収したいと思う企業の条件を知る
 
買い手の立場になって、どんな企業だったら買収したいと思うのか考えてみます。主な条件は、次が挙げられるでしょう。

 ① 安定した利益がある
  
⇨ 安定した利益実績があれば、買い手は投資回収がどのように見込めるか、
    見通しが立てやすくなる。

 ② 将来性がある
  
⇨ 将来性がある事業は、魅力的。アピールポイントになる

 ③ 既存ビジネスとの相乗効果が見込める
  
⇨ 買収した事業と、既存事業との相乗効果で、1+1が2以上になることも可能

 ④ 優れたノウハウや経営資源を持っている
  
⇨ 高度な技術やノウハウ、優秀な人材、優良なネットワークや顧客、新規取得が
    困難な施設や設備などteoria-h28.png

 ⑤ 権利・許可・認可を持っている
  
⇨ 商標権、特許、独占販売権、事業者免許などの権利や資格

     売れる企業にする
 
買い手の心理を理解して、売れる会社への準備を進めてください。
上記までのまとめになりますが、売れる企業にする主な項目は、次になります。

 ① 財務内容を客観的に評価し良くする
  
財務内容は、買収金額に大きな影響を与えます。したがって財務内容が良ければ交渉も有利に
 すすめることができます。そのためにも、財務内容を客観的に分析し評価して、向上に勤めること
 は必須です。 会社分割を行い、収益を生まない部門を外部委託するなどして、切り取ることも
 一つの手段です。

 ② M&A条件の希望を明確にする
 
 譲渡額や譲渡範囲、役員や従業員の待遇など条件は多々ありますが、条件と優先順位を整理し
 交渉を始めてください。
  初めから明確に、買取企業に提示することで、交渉が進みやすくなります。

 ③ 自社を客観的に把握する
  
自社の強みや弱み、チャンスや脅威など客観的に把握することで、よりよい買い手を探すことが
 できます。

 ④ 魅力を表現する
  
自社の魅力を引き出し、アピールすることで、買い手候補との交渉が上手にすすみます。


info02 次回タイトル
  【わが社はいくらで売却できますか?】
    H26.3.15 更新予定です。 どうぞお楽しみに!