100年企業をめざす「事業の承継」(第17回)
19.従業員などへ承継するときの注意点はありますか?
POINT
1 ► 関係者の理解を得る |
2 ► 後継者教育 |
3 ► 株式買取等の資金不足 |
4 ► 個人保証・担保提供 |
◎ 関係者の理解を得る
役員や従業員などへの承継に対して、反対する経営者親族が現れる可能性があります。
また、やっかみから、他の役員や従業員が協力を拒み、足を引っ張ることも考えられます。
人間関係に配慮して、時間をかけながら理解をしてもらいます。
親族内承継に比べて、関係者からの理解を得るために、時間がかかる場合があります。
また、一時的中継ぎによる承継の場合は、中継ぎ後継者と意思の疎通を、しっかりと図ることが大切です。中継ぎ承継と株式買取の承継では、親族や関係者への説明方法も変わります。
◎ 後継者教育
企業の永続と発展を第一に、経営計画を策定します。
そして、後継者には事前に役員として、その実践を通じて教育していくことが王道です。
承継後も一定の期間は、会長職などで新経営者をサポートすることも必要でしょう。
◎ 株式買取等の資金不足
親族承継の場合は、最終的に事業用資産や自社株式の財産を相続で承継することができます。
しかし、役員や従業員などは、経営の安定を図るためにも、一定の株式を現経営者から買い取る必要があります。現実的には、役員や従業員が株式を買い取る資金がないことが多く、障害となります。
対策としては主に、次の3つがあります。
① MBO(EBO)による資金調達
② 経営権だけを承継する
③ 種類株式の活用
◎ 個人(債務)保証・担保提供
中小企業の経営者は、企業の借入金に対して個人保証や、担保を差し出している場合が多いのが実状です。借入金がある場合は、現経営者の個人保証について、後継者にも連帯保証を求められることがあります。
役員や従業員などへ事業承継する場合に、これらの個人保証や担保提供の方法が問題となります。主な対策は、次の3つです。
① 債務の圧縮
債務の圧縮は、企業の財務状況により時間がかかる可能性があります。
個人保証が必要な債務は、事業承継の妨げとならないように、早期に整理し、
後継者に負担がかからないようにすることが必要です。
② 金融機関との交渉
企業の借入金に対して、現経営者個人の連帯保証を抜くことは金融機関の承諾がなければ
始まりません。まずは、後継者の負担が少なくなるように、事業承継の理解を求めながら、
金融機関との交渉を進めてください。
③ 後継者の負担に見合った報酬
債務の圧縮努力をしても、全ての個人(債務)保証や担保を抜くことは難しいかもしれません。
その場合に、金融機関から残債務保証について、後継者にも連帯保証を求められる可能性が
高くなります。
現経営者の法定相続人が後継者となる場合と違い、役員や従業員などの、現経営者の個人資産を相続できない立場の後継者にとって、精神的にも大きな負担になります。
後継者の負担に見合った報酬を、確保するような配慮が必要です。
次回タイトル
【MBO、EBOの特徴を教えてください】
H25.11.1更新予定です。どうぞお楽しみに!