100年企業をめざす「事業の承継」 (第13回)
15.売買による承継のメリットは何ですか?
POINT
1 ► 経営に対して、真剣に取り組む姿勢が期待できる |
2 ► 後継者としての意識と経営に対する意欲を、早い時期に持つことができる |
3 ► 他の相続人から、遺留分の制約を受けることがない |
◎ 経営に対して、真剣に取り組む姿勢が期待できる
売買により、現経営者の所有する事業用資産および自社株式の取得は、当事者である現経営者と後継者同士の合意で財産の移転ができます。この点は、生前贈与による財産移転と同様です。
生前贈与による財産の移転との違いは、後継者が自ら経済負担を負うことになりますので、それだけ真剣に経営に取り組む姿勢が期待できます。
◎ 後継者としての意識と経営に対する意欲を、早い時期に持つことができる
後継者は、売買契約が成立した時に、財産を手にすることになります。現経営者が廃業したくてもできません。また、他の親族に譲渡することもできません。
したがって、後継者は安心して経営に取り組むことができます。後継者が自ら経済負担を負うことで、現経営者も親族および従業員、その他の関係者に対して、事業承継の意思表明もしやすくなります。後継者の強い意志をこれにより表現でき、関係者も安心してくれるでしょう。
◎ 他の相続人から、遺留分の制約を受けることがない
生前贈与による事業用資産や自社株の取得と違い、後継者は対価を支払うため、その他の法定相続人から遺留分の減殺請求を受けることはありません。
売買による事業承継には、次の3つの注意点があります。
① 後継者は買取に係る自己資金が必要
一般的に、後継者が現経営者から事業用資産や自社株式を買い取ることができる
資金を有していないことが多いです。
したがって、従業員等への承継と同様に、資金調達がポイントになります。
② 低額譲渡は、贈与とみなされる
売買契約の価額は、親族だからといって市場価格とかけ離れる低額である場合は、
その対価が不当として贈与とみなされます。
③ 現経営者に譲渡所得税がかかる
現経営者と後継者の間で売買契約により、事業用資産や自社株式の譲渡が行われます。
その場合に、現経営者に財産の譲渡益が発生すると、譲渡所得税が課税されます。
次回タイトル
【 遺留分の性質と対策を教えてください】
H25.9.1更新予定です。どうぞお楽しみに!