100年企業をめざす「事業の承継」(第78回)
79.定款を変える必要はありますか?
POINT
1 ► 企業を守る定款 |
2 ► 法的効力を有するためには、定款の変更が必要 |
◎ ———— 企業を守る定款
事業承継では、後継者や友好的な株主に自社株式を集中させ、経営権を確保するための対策が必要です。この方法として、2006年に施行された新会社法施行の各種制度を、活用することが可能です。この新会社法では、定款自治の範囲が広げられ、定款を積極的に活用することで、次の事柄が可能です。
1 揉め事予防
事業承継において揉め事を防止するための代表として、株式の集中及び
分散防止が挙げられます。次の会社法を活用して、対策を立てることができます。
① 分散した株式の買取り
経営者や後継者個人による株式の買取りや、企業が自社株式の取得(金庫株)をすることができる
② 株式譲渡制限条項の設置
企業にとって好ましくない者へ、株式の譲渡(売却)を制限することができる
③ 相続人に対する売渡請求条項の設置
株式を相続した者が企業にとって好ましくない場合に、企業が株式の売渡請求を行うことができる
2 経営の自由度を高めることができる
会社法では異なる権利を付与した、複数の種類株式を発行することができるようになりました。そのためには、定款に定め登記が必要になります。この種類株式は、議決権をコントロールすることも可能です。
① 議決権制限株式の発行
議決権制限株式とは、株主総会での特定の議決権が制限された株式です。この議決権制限株式
を、後継者以外の相続人に相続させることで、後継者に議決権を集中させることができます。
② 拒否権付種類株式(黄金株)の発行
拒否権付種類株式とは、黄金株とも呼ばれています。
株主総会の特定の決議事項について、拒否権を有する株式のことです。
この黄金株を現経営者が保有することで、合併や代表取締役の選任を拒否する
など、後継者に信頼がおけるようになるまで、睨みを利かせることができます。
◎ ———— 法的効力を有するためには、定款の変更が必要
定款は、次の記載事項から構成されています。
1 絶対的記載事項
不足していると定款全部が無効になる事項(目的、商号、本店所在地、発行可能株式総数)
2 相対的記載事項
定款へ記載することで法的効力が有効になる事項(取締役会や監査役の設置、株式売渡し請求の定め、自己株式取得時の他の株主の売主追加請求を排除する定め、種類株式発行に関する定めなど)
定款の範囲で株主など拘束できる事項(株主総会の開催時期及び召集手続き、事業年度、取締役・監査役の員数など)会社法を活用した各種制度を有効に行うため、定款への記載が法的効力をもたらす、相対的記載事項が大幅に増えました。法的効力を有するためには、定款変更が必要です。
定款変更には、株主総会を開催し特別決議を経て、変更内容を定めます。したがって、制度を活用するためには、少なくとも議決権の3分の2以上の賛成の確保が必要となります。また、種類株式の活用においては、自社株式の発行価格や税務上の評価など、専門的な知識も必要となります。専門家へ相談しながら、活用することをお勧めします。
次回タイトル
【少数株主への対応策を教えて下さい】
H28.5.15 更新予定です。 どうぞお楽しみに!