なかの語録

100年企業をめざす「事業の承継」(第68回)

69.相続時精算課税制度の活用方法を教えて下さい

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 1 ► 相続時精算課税制度とは
 2 ► 制度利用の適用要件
 3 ► 相続時精算課税制度の活用


———— 相続時精算課税制度とは
 相続時精算課税制度は、生前に贈与を受けた財産を、相続の時に精算する制度です。贈与のときに税金を納めていれば、相続税からすでに払った贈与税額を控除することができます。
この制度には、次の特別控除があります。
 ① 同一の親からの贈与は、2,500万円の限度額に達するまで、何回でも控除することができる
    ※ 2,500万円までの贈与には贈与税がかからない

 ② 贈与額が2,500万円を超えた場合には、超えた額に対して20%の贈与税が課税される
 ③ 納めた贈与税は、相続時に相続税額から差し引かれ、相続税額の方が少ない場合は差額が還付
  される
  (相続財産+贈与財産-基礎控除)×相続税率-控除額-納めた贈与税額 = 相続税額

 相続時精算課税制度と従来の贈与税の課税方式は、納税者が選ぶことができます。 ただし、一度選択したら取り消すことはできません。

 ———— 制度利用の適用要件
 制度を利用できる対象者は、贈与年の1月1日現在の年齢が、65歳以上の親から、20歳以上の推定相続人である、直系卑属への贈与となります。(住宅取得等資金の場合には、親の年齢制限なし)贈与財産は、種類や価額、贈与の回数は制限ありません。

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 この制度を利用するには、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日の申告期限内に「相続時精算課税選択届出書」を提出します。この届け出を提出した受贈者を「相続時精算課税適用者」といい、贈与者を「特定贈与者」といいます。
  課税価格は、特定贈与者ごとに計算します。
 

 ———— 相続時精算課税制度の活用
 相続時精算課税制度は、贈与した時の時価で、相続財産に加算され相続税を算出します。したがって、この制度を適用し贈与した財産の価額が、相続のときに上昇していれば、この制度を活用したことが有利に働きます。
 しかし、相続時に下落していれば不利に働きます。この点を踏まえ、事業承継でこの相続時精算課税制度を有利に活用する例として、自社株の移転があります。

 例えば、この制度を利用し自社株式を5,000万円贈与したとします。贈与した後に、後継者が頑張って、自社株式評価をあげ1億円に上昇していても、相続の時に相続財産に加算される価額は、贈与した時点の5,000万円のままとなります。
 相続時精算課税制度を活用した場合と、相続の時に財産を相続した場合で、5,000万円のこの差は、仮に相続税率が30%の場合に、1,500万円も納める税金が違います。
 後継者が努力して自社株式をあげても、相続が発生してから後継者に、自社株式を含む財産のほとんどを移転した場合は、他の相続人に対して遺留分の問題も発生します。

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相続時精算課税制度で自社株式を贈与することで、後継者の士気も上がり、円滑な事業承継が期待できます。


info02 次回タイトル
 【暦年贈与と相続時精算課税制度の違いは何ですか?】
  H27.12.15更新予定です。どうぞお楽しみに!!