100年企業をめざす「事業の承継」(第39回)
40.遺言で遺産分割の方法を決めたほうが良いですか?
POINT
1 ► 遺言書の必要性 |
2 ► 遺言書の限界 |
3 ► 納得してもらう遺言書 |
◎ ———— 遺言書の必要性
相続が発生すると、亡くなった方の財産は、相続財産として法定相続人全員の共有財産となります。遺産分割割合は、法定相続人が話し合い決定します。
相続発生に伴い、事業承継を行う場合は、後継者が安心して経営をできる環境を整えるように「自社株式」の保有割合が、重要になります。
この場合に、後継者に財産が集中する恐れがあり、後継者以外の法定相続人との間に思惑のずれが生じ、遺産分割協議がまとまらずに骨肉の争いになる恐れがあります。このような場合に、遺言書により法定相続人がそれぞれ受ける遺産分割方法を定めることができます。
分割方法を第三者に委託することも、相続開始から5年を超えない間に分割を禁止することも可能です。遺言書を通じて経営者が、家族への想いはもちろんのこと、企業への熱い思い、将来像など遺志を後継者に伝えることができます。
◎ ———— 遺言書の限界
後継者に安定した経営ができる自社株式を、承継させる対策を生前に行う有効な方法は、「遺言書の作成」です。しかし、この遺言書は完璧な対策ではありません。
① 法定相続人全員の同意があれば、遺言書と異なる遺産分割ができる
② 法定相続人(兄弟姉妹を除く)には遺留分という最低限保証された取り分がある
たとえば、①の場合は、経営者が企業存続を願っても後継者と定めた子が承継する気がなく、後継者が亡くなった後に法定相続人全員の同意を得て、遺言と違う分割ができてしまいます。
②の場合は、財産を後継者に集中させようと思っても、後継者以外の法定相続人から「待った」がかかればそれを無視することはできません。
◎ ———— 納得してもらう遺言書
当然のことですが、遺言書の限界に対する対策の第一は、法定相続人の全員が納得する内容となることです。そのために活用できるのが「付言事項」です。
遺言書の内容は、財産の処分に関すること、身分に関することを指定します。そして最後に付言事項という、法的に効力を持っていませんが、相続人に意思を伝える言葉を付加することができます。
遺言書で、後継者に財産のほとんどを相続させる理由も、綴る事ができます。遺言者が最後に残した遺志ですから、尊重されるでしょう。最後に「付言事項」で遺志を伝えることは、争いをなくすためにも重要です。
法定相続人が持つ遺留分についての対策は、後継者以外の法定相続人に遺留分放棄をしてもらうことがベストです。
しかし、法定相続人それぞれ思惑があります。また、放棄するには家庭裁判所の許可も必要となります。
「生前贈与をする代わりに、遺留分を放棄してほしい」など相続人それぞれの生活環境に配慮しながら、話し合って決めることが重要です。
次回タイトル
【事業承継計画に必要な資料を教えて下さい】
H26.10.1 更新予定です。 どうぞお楽しみに!