100年企業をめざす「事業の承継」(第19回)
21.経営権だけを承継する方法はありますか?
POINT
1 ► 財産権と経営権を分離 |
2 ► 種類株式の活用 |
◎ 財産権と経営権を分離
財産権は、株式など財産価値として高額になります。そこで、MBOを活用した承継が難しい場合に、高額な自社株式の価額を下げる方法として、経営権と財産権を分離させ、経営権だけを承継させる方法があります。
◎ 種類株式の活用
種類株式とは、定款で定める目的を持った株式で、新会社法で非公開の中小企業に認めているのは、次の9つです。
①剰余金配当優先株式 | 有利な条件で配当を受ける |
②残余財産分配優先株式 | 企業精算する時に財産の分配を受ける |
③議決権制限株式 | 議決権を行使できない株式(全部または一部) |
④譲渡制限株式 | 株式の譲渡には会社の承認が必要 |
⑤取得請求権付株式 | 株式の取得を会社へ請求することができる |
⑥取得条項付株式 | 一定条件を満たせば会社が株式を取得できる |
⑦全部取得条項付株式 | 株主総会の特別決議で会社が株式をすべて取得できる |
⑧拒否権付株式 | 特定の決議事項に対し拒否権を与えた株式。黄金株 |
⑨取締役・監査役選任権付株式 | この種類株式を持つ株主から取締役や監査役を選ぶことができる |
大切なことは、株式の買取資金が乏しい後継者が、経営権を維持できる株式を取得することです。たとえば、次のような活用ができます。
● 議決権制限株式
議決権のある普通株式を、後継者に取得させて経営権を集中します。
議決権制限株式を後継者以外の親族に相続させて財産を残します。
● 拒否権付種類株式(黄金株)
拒否権付株式を発行して、重要事項についての拒否権を現経営者が保持します。
後継者には、株式の大部分を譲渡します。
このような方法で「経営権」と「財産権」を分離することで、後継者が株式を取得しやすくなります。ただし、経営権と財産権が分離することで、経営陣と株主との間で対立することも考えられます。専門家に相談しながら、慎重に検討しましょう。
次回タイトル
【従業員などへ中継ぎ承継する方法はありますか?】
H25.12.1更新予定です。どうぞお楽しみに!