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投稿者:柏樹 正一
|2020年10月12日(月)
税理士 柏樹 正一のコラム(第45回)
私事ですが、過去に税務訴訟に携わったことがあります。
税務調査は、税務署が納税者の申告内容を帳簿書類などで確認し、証拠に基づいて事実認定し、それに法律を適用することにより、申告の適否を判断し、誤りがあれば指摘し是正を求めるものですが、その「誤りの指摘」に対して、納税者の言い分や考えに食い違いが生ずることがあります。
納税者と税務署の意見が食い違い、法律効果の発生に白黒決着がつかない場合はどうなるのでしょう?
意見の食い違いがある場合、往々にして、お互いの立場や有利に働かせようとする感覚や感情で優劣を決しがちですが、その解決は法律に基づき処理することになり、訴訟に至るケースもあります。
法律の適用について、我が国の民事訴訟では、原則として、自己に有利な法律効果の発生を求める者がその立証責任を負う、言い換えると、相手方に不利な法律効果を与える者が立証責任を負うといわれています。
これを、税務判断に当てはめると、所得の存在及びその金額について、①その発生(増加)や特典のはく奪については、税務署は自己に有利な法律効果の発生を求める立場にあり、納税者は不利な立場にありますので、原則として、税務署が立証責任を負い、例外として、②その発生の障害、消滅(減少)や特典の付与については、納税者が有利な立場にありますので、納税者が立証責任を負うといわれています。
次回は、立証責任の主な具体例について紹介します。